2.4 逆写像

$ f:A\longrightarrow B\strut$が全単射であるとき,定義より任意の $ b\in B\strut$に対し, $ b=f(a)\strut$となる$ a\in A$がただひとつ存在する.$ b$に対しこの$ a$を対応させることで, $ B$から$ A$への写像が定まる.この写像を$ f\strut$逆写像$ f\strut$が関数のときは逆関数)と言って, $ f^{-1}\strut$で表す18

$\displaystyle (*)\qquad x=f(y) \Leftrightarrow y=f^{-1}(x)\strut$

が成り立つ.

問題 2.46   $ f:A\longrightarrow B\strut$を全単射とする.逆写像 $ f^{-1}:B\longrightarrow A\strut$も全単射であることを示せ.

定理 2.47  

$ A,B\subseteq \mathbb{R}\strut$ $ f:A\longrightarrow B\strut$を全単射とすると,逆関数 $ y=f^{-1}(x)\strut$のグラフは $ y=f(x)\strut$のグラフと直線$ y=x\strut$に関して対称である.

証明 $ y=f(x)\strut$のグラフ上の点 P の座標を $ (a,b)\strut$とする.このとき,点 P と直線$ y=x\strut$と 対称な点 Q の座標は $ (b,a)\strut$である. $ b=f(a)\strut$であるから$ (*)\strut$より $ a=f^{-1}(b)\strut$である. 従って,点 Q は $ y=f^{-1}(x)\strut$のグラフ上の点である.よって, $ y=f^{-1}(x)\strut$のグラフと $ y=f(x)\strut$のグラフは直線$ y=x\strut$に関して対称である. $ \Box$

定理 2.48  

$ f:A\longrightarrow B\strut$を全単射とする.このとき,

$\displaystyle f^{-1}\circ f=I_A,\quad f\circ f^{-1}=I_B\strut$

である.

証明 $ x=f^{-1}(f(a))\strut$とする.このとき, $ f(x)=f(a)\strut$である.$ f\strut$は単射であるから$ x=a$である. よって,任意の$ a\in A$に対し, $ I_A(a)=a=f^{-1}(f(a))\strut$となる.また, $ a=f^{-1}(b)\strut$とおくと, $ f(a)=b\strut$であるから,任意の $ b\in B\strut$に対し, $ f(f^{-1}(b)=b=I_B(b)\strut$となる. $ \Box$

問題 2.49   $ f:A\longrightarrow B\strut$を全単射とする. $ g:B\longrightarrow A\strut$ $ f\circ g=I_B\strut$を みたすならば,$ g\strut$は全単射でかつ $ g=f^{-1}\strut$であることを示せ.

問題 2.50   $ f:A\longrightarrow B\strut$ $ g:B\longrightarrow C\strut$に対し, $ f,g\strut$がともに全単射ならば, $ g\circ f\strut$も全単射であり, $ (g\circ f)^{-1}=f^{-1}\circ g^{-1}\strut$であることを示せ.

問題 2.51   $ A:=\left(\begin{array}{cc}
a&b\\
c&d
\end{array}\right)\rule[-20pt]{0pt}{8pt}$ $ \det A \neq 0\strut$である行列とする.このとき, $ T_A^{-1}=T_{A^{-1}}\strut$ であることを示せ.(ヒント:問題 2.49

TAKAHASHI Makoto : http://herb.h.kobe-u.ac.jp/