に対しては,一般に
であるが,特に
が成り立つとき,すなわち
が成り立つとき,をからの上へ(onto)の写像,
あるいはからへの全射(surjection)といい,
あるいは
で表す.
例題 2.27
は
から
への全射であることを示せ.
解:
とする.
とおくと,
である.
よって,上の条件(*)をみたすから,
は全射である.
解:
とする.このとき,
が全射であるから
となる
が存在する.
この
に対し,
が全射であることより
となる
が存在する.従って,
となるから,
も全射である.
問題 2.30
例題 2.28の逆は一般には成り立たない.反例を考えよ.
従って,軸に平行な任意の直線と
が交点を持つことと,
,すなわちが全射であること
は同値である.
解:
であるから,
の増減表を書くと,
である.また,
で
は連続関数であるから,
は軸に平行な任意の直線と交点を持つ.よって,は全射である.
問題 2.33
をそれぞれ次の式により定義された
から
への写像とする.
これらの写像のなかで全射であるのはどれか.
問題 2.34
とする.直積の各要素
に対して,
その第1成分(第2成分)を対応させる写像
pr
pr
pr
pr
を射影 (projection)
という.射影は全射であることを示せ.
証明:
そのような写像
が存在したとする.このとき,各
に対し,
とおき,さらに
とする.
であるから
である.従って
が
の上への
写像であることより,
となる
が存在するが,このとき,
であるから,特に
として
をとると,
である.一方,
の定義より,
となり,
であることと
が同値となり矛盾する.よって,
から
への上への写像は存在しない.
において,一般に
であるからといって
とは限らない.
例えば,上の例題2.32では
である.
ならば常に
となるとき,
をからへの1対1(one to one)の写像,
あるいはからへの単射(injection)とよび,
あるいは
で表す.
のとき定義より
である.
例題 2.36
は
から
への単射であることを示せ.
解:
とする.
より
である.よって,
は単射である.
問題 2.37
は
から
への単射であることを示せ.
証明:
とする.
で
が単射であるから,
であり,さらに
も単射であるから
を得る.よって,
がともに単射ならば,
も単射である.
問題 2.41
をそれぞれ次の式により定義された
から
への写像とする.
これらの写像のなかで単射であるのはどれか.
全射かつ単射である写像を,全単射(bijection)あるいは1対1かつ上への写像(one to one onto)とよび,
で表す.
が全単射のとき,
をとの間の1対1対応とよぶこともある.からへの写像での各元にそれ自身を対応させる写像を
上の恒等写像とよびで表す.恒等写像は全単射である.
証明:
が全単射であるとする.
は全射であるから,
任意の
に対し
となる
が存在する.
に対し,
とすると,
で
は単射であるから
となる.
よって,任意の
に対し
をみたす
がただ一つ存在する.
逆に,任意の
に対し
をみたす
がただ一つ存在するとする.
このとき,
が全射であることは明らかである.
が単射であることを示す.
とする.
とおくと,仮定より
となる
はただ一つであるから
である.よって,
は単射である.
問題 2.43
をそれぞれ次の式により定義された
から
への写像とする.
これらの写像のなかで全単射であるのはどれか.
解:
とする.このとき,
は逆行列をもつから任意の
に対し
をみたす
は
のみである.よって,定理
2.42より
は全単射である.逆に
が全単射かつ
とする.このとき,
で
は単射であるから,
となり,
となる.しかし,このとき任意の
に対し,
となり,
の形のベクトルは
の像には属さない.これは
が
全射であることに反する.
TAKAHASHI Makoto : http://herb.h.kobe-u.ac.jp/