反射的,反対称的かつ推移的である関係を半順序(partial order)とよぶ.
例題4.1より実数上の関係はこの3条件をみたすから半順序である.
が集合上の半順序のとき,とを組にして考えた
を
半順序集合(partially ordered set)とよぶ.
考えている半順序が明らかなときは,単にを半順序集合とよぶこともある.
を半順序集合とする.の元は
または
が成り立つとき比較可能
であるという.の任意の元が比較可能であるとき,
は全順序集合
(totally ordered set)あるいは線形順序集合(linearly ordered set)とよばれる.を実数上の順序とすると,
は全順序集合である.例4.26は全順序集合ではない.
を半順序集合とする.
に対し,がの極
小元であるとは,
をみたすときをいう.同様に
をみた
すとき はの極大元と
よばれる.の任意の空でない部分集合が極小元をもつとき,
は
整礎集合(well-founded set)
とよばれる.
証明:
全順序集合
が整礎集合であるとする.
の任意の空でない部
分集合
は極小元をもつ.
はただ一つの極小元(すなわち最小元)をもつことを示す.
と
を
の極小
元とする.
は全順序集合であるから,
がなりた
つ.
のときは,
が極小元であることより
となる.一方,
の場合も
が極小元であることより
となる.よって,
は極小元をただひとつもつ,
すなわち
は最小元をもつ.
逆は,定義より明らかである.
整礎である全順序集合を整列集合とよぶ.
証明:
を整礎集合とする.
は
をみ
たす点列とする.
とおくと,これは
の空でない部分集合で
は整礎集合で
あるから,極小元
をもつ.
の定義より,ある番号
があって,
となる.このとき,
であるが,
が極小元
であるから定義より
となる.逆に,
は無限下降列をもた
ないとする.
を
の空でない部分集合とする.
が極小元を持たないと仮定する.このとき
がなりたつから,
となる真の無限
下降列が存在する
ことになるが,これは
は無限下降列をもたないに反する.
整礎集合
に対しては次の帰納法が適用できる.
定理 4.32 (整礎集合上の帰納法)
を整礎集合,
を上の述語とする.このとき
が成り立つ.
証明:
対偶を証明する.
とする.このとき,
とおくと
は空でないから,
は極小元
をもつ.
は
の極小元であるから,
が成り立つ.
よって,
をみたす
が存在する
ことになる.
例 4.33
に対し,整礎集合上の帰納法を考えると
となるが,これは通常累積帰納法とよばれるものである.
TAKAHASHI Makoto : http://herb.h.kobe-u.ac.jp/