1.2 集合の表し方

1.2.1 枚挙による方法--元をすべて書き並べて{}でくくって表す方法

$ n$個の対象 $ a_1,a_2,\cdots ,a_n$が与えられたとき,それらを元としてもつ 集合を $ \{a_1,a_2,\cdots ,a_n\}\strut$で表す.

1.3  

自然数$ 1,2,3$を元にもつ集合は $ \{1,2,3\}\strut$と表され,式 $ x,x^2,x^3,x^4\strut$を元にもつ集合は $ \{x,x^2,x^3,x^4\}\strut$と表される.

この方法は元の個数が少ないときに有効である.有限でも元の数が多いときや無限にたくさんの 元をもつ集合に対して

$\displaystyle \{1,2,3,\cdots ,19,20\}\strut\qquad\{2,4,6,\cdots ,2n,\cdots\}\strut$

と表すこともあるが,$ \cdots$の意味が文脈からはっきりしていることが必要である. 上の例では通常前者は$ 1$から$ 20$までの自然数の集合,後者は正の偶数の集合であることが 予想される.

$ x$のみを元として持つ集合 $ \{x\}\strut$$ x$シングルトン 単集合 (singleton)2とよぶ. $ a_1,a_2,\cdots ,a_n$の中に同じ対象が複数あるとき,外延性の公理より,集合としては元の重複は考えない.例えば $ \{1,1,2,2,3\}\strut$ $ \{1,2,3\}\strut$は同じ集合である3

1.2.2 条件による方法(その1)

$ x$についての条件4 $ A(x)\strut$が与えられたとき, $ A(x)\strut$をみたすもの全体からなる集合 を

$\displaystyle \{x\bigm \vert A(x)\}\strut$

で表す.

注意 ここでは条件 $ A(x)\strut$に何の制限も付けていないが, 本当は $ A(x)\strut$は何でもよいわけではない.詳しくは[5]などで,ラッセルのパラドックスについて調べてほしい.

例題 1.4   $ \{x\bigm \vert x$は整数でかつ $ (x+1)(x-3)\leqq 0\}\strut$はどのような集合か.この集合を元を並べる方法で表せ.

: 任意の実数$ x$に対し, $ (x+1)(x-3)\leqq 0  \Leftrightarrow -1\leqq x \leqq 3$ であるから5, 条件 $ (x+1)(x-3)\leqq 0$をみたす整数$ x$ $ -1,0,1,2,3$である. よって,この集合を元を並べる方法で表すと $ \{-1,0,1,2,3\}\strut$となる. $ \Box$

条件が'$ x\in S$ かつ $ A(x)\strut$'の形のときは, $ \{x\bigm \vert x\in S$ かつ $ A(x)\}\strut$ $ \{x\in S\bigm \vert A(x)\}\strut$で表すことが多い. 例えば,例題1.4の集合は $ \{x \in \mathbb{Z}\bigm \vert(x+1)(x-3)\leqq 0\}\strut$のように表現する.

問題 1.5   次の集合を元を並べる方法で表せ.

  1. $ \{n\in \mathbb{N}\bigm \vert 2^n \leqq 100\}\strut$
  2. $ \{x\in \mathbb{Z}\bigm \vert \vert x-1\vert \leqq 2\}\strut$
  3. $ \{ x \in \mathbb{R}\bigm \vert x^3-1=0 \}$
  4. $ \{ x \in \mathbb{C}\bigm \vert x^3-1=0 \}$

条件を表すときに,日本語の“かつ”,“または”,“ならば”,“...でない”を用いると表現が複雑になる場合は, 論理記号 $  \wedge ,  \vee ,  \rightarrow , \neg $を用いて表現することにする.


表: 論理記号
日本語 論理記号
かつ $  \wedge $
または $  \vee $
ならば $  \rightarrow $
でない $ \neg$

1.6  

$ x$$ 5$以下の自然数である” という条件は,“ $ x\in \mathbb{N} \wedge x\leqq 5$”と表現される.

問題 1.7   次の条件を論理記号を用いて表現せよ.
  1. $ x=0$または$ y=0$である.
  2. $ x < y$かつ$ y < z$,ならば$ y=0$である.
  3. $ x < y$ならば$ x=0$であり,$ x >y$ならば$ y=0$である.
  4. $ x=0$かつ$ y=0$となることはない.

集合を表す条件が $ A(x) \wedge B(x) \wedge C(x)\strut$のように $  \wedge $で続いているときは,条件を単に並べて $ \{x\bigm \vert A(x),B(x),C(x)\}\strut$と表すのが普通である.また,集合 $ \{x\in S\bigm \vert A(x)\}\strut$を考えるとき, 文脈から$ S$の元を考えていることが明らかなときは$ S$を省略して $ \{x\bigm \vert A(x)\}\strut$と表すこともある 6

集合 $ \{x\in S\bigm \vert A(x)\}\strut$$ A$という名前をつけることを,

$\displaystyle A:=\{x\in S\bigm \vert A(x)\}\strut$

で表す7.他に $ A\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{x\in S\bigm \vert A(x)\}\strut$あるいは $ A\stackrel{\mathrm{\triangle}}{=}\{x\in S\bigm \vert A(x)\}\strut$のように表すこともある.

次の命題は当たり前のことであるが,重要である.

命題 1.8   $ \mbox{$A:=\{x\bigm \vert P (x)\}$}$とするとき, $ a\in A$であるための必要十分条件は$ a$が条件 $ P(x)\strut$をみたすこと である.

1.2.3 条件による方法(その2)

$ p(x)\strut$が与えられたとき,$ A$の元$ x$に対する $ p(x)\strut$の値の全体を $ \{p(x)\bigm \vert x\in A\}\strut$で表す.

1.9  

$ 3$の正の倍数全体の集合は,自然数に$ 3$をかけてできる数の全体であるから,

$\displaystyle \{3n\bigm \vert n\in \mathbb{N}\}\strut$

のように表される.

問題 1.10   次の集合を条件による方法を用いて表せ.
  1. $ 7$の正の倍数全体の集合
  2. 正の奇数全体の集合
  3. $ 2$項たてベクトル $ \left( \!\!\begin{array}{c} 1  2 \end{array} \!\!\right)\rule[-20pt]{0pt}{8pt}$のスカラー倍(実数倍)全体の集合
  4. 実数係数の$ x$についての高々$ 2$次の多項式全体の集合

$ B:=\{p(x)\bigm \vert x\in A\}\strut$のとき,定義より

$ a\in B  \Leftrightarrow $ $ a=p(x)\strut$ となる $ x\in A$ が存在する (*)
が成り立つ.従って, 与えられた集合 $ B:=\{p(x)\bigm \vert x\in A\}\strut$に対し, $ a\in B$を示すには, $ a=p(x)\strut$となる元$ x\in A$が存在することを示せば良い. また(*)の $  \Leftrightarrow $の両辺を否定して書き換えると

$ a \notin\strut B$ $  \Leftrightarrow a=p(x) \strut$となる $ x\in A$ は存在しない
  $  \Leftrightarrow $ 任意の$ x\in A$ に対し, $ a\ne p(x)\strut$である         (**)
  $  \Leftrightarrow a=p(x) \strut$をみたす任意の$ x$ に対し, $ x\notin\strut A$ である

となるから, 与えられた集合 $ B:=\{p(x)\bigm \vert x\in A\}\strut$に対し, $ a \notin\strut B$を示すには,

$ a=p(x)\strut$となる$ x\in A$ は存在しないこと
あるいは
任意の $ x\in A$ に対し $ a\ne p(x)\strut$であること
あるいは
$ a=p(x)\strut$をみたす任意の$ x$ に対し $ x\notin\strut A$ であること
を示せば良い.

例題 1.11   次が正しいかどうか調べよ.
  1. $ 12\in \{n^2+n\bigm \vert n\in \mathbb{Z}\}\strut$
  2. $ 11\in \{n^2+n \bigm \vert n\in \mathbb{Z}\}\strut$

1: $ n=3$とすると, $ n^2+n=12\strut$であるから, $ 12\in \{n^2+n\bigm \vert n\in \mathbb{Z}\}\strut$である.
2:(その1) $ n^2+n=n(n+1)\strut$$ n$または$ n+1$のどちらかは偶数であるから, $ n^2+n\strut$は常に偶数である.従って,任意の $ n\in \mathbb{Z}\strut$ に対し, $ n^2+n\ne 11\strut$である.よって, $ 11\notin\strut \{n^2+n \bigm \vert n\in \mathbb{Z}\}\strut$である.
(その2)2次方程式 $ n^2+n-11=0\strut$を解くと, $ n=\dfrac{-1\pm 3\sqrt{5}}{2}\notin\strut \mathbb{Z}\rule[-20pt]{0pt}{8pt}$である. よって, $ 11\notin\strut \{n^2+n \bigm \vert n\in \mathbb{Z}\}\strut$である. $ \Box$

問題 1.12   次が正しいかどうか調べよ.
  1. $ 19 \in \{3n+1\bigm \vert n \in \mathbb{N}\}\strut$
  2. $ 5 \in \{3n+1\bigm \vert n \in \mathbb{N}\}\strut$
  3. $ 10 \in \{n^2+1\bigm \vert n \in \mathbb{N}\}\strut$
  4. $ 11 \in \{n^2+1\bigm \vert n \in \mathbb{N}\}\strut$
  5. $ 6 \in \{2n^2-5\bigm \vert n \in \mathbb{N}\}\strut$
  6. $ 13 \in \{2n^2-5\bigm \vert n \in \mathbb{N}\}\strut$
  7. $ 60 \in \{n^3-n\bigm \vert n \in \mathbb{N}\}\strut$
  8. $ 80 \in \{n^3-n\bigm \vert n \in \mathbb{N}\}\strut$

(*)の右辺の条件のように,“$ \cdots$となる(をみたす)$ x$が存在する”と条件が表されるとき 記号 $ \exists \strut$を用いて, $ \exists x [ \cdots ]\strut$のように表現する.

記号$ \exists $は,Exist(存在する)の頭文字のEをさかさまに書いたものである.この記号を最初に用いたのはGiuseppe Peano (1858-1932)である. [7]

(*)の右辺の条件をこの記号を用いて表現すると

$\displaystyle \exists x[ x \in A  \wedge a=p(x)]\strut$

となる.存在記号を用いて条件を表すときは $ \exists x [ x \in A  \wedge P(x) ]\strut$のように, 存在している対象$ x$の属する集合が明示される場合が ほとんどである.この場合,板書などでは人により書き方は異なるが

$ \exists x \in A [P(x)]\strut$   $ \exists x \in A ;P(x)\strut$
$ \exists x \in A :P(x)\strut$   $ P(x) (\exists x \in A)\strut$
$ P(x) \textrm{ for some } x \in A\strut$   $ \exists x \in A \textrm{ such that } P(x)\strut$
$ \exists x \in A \textrm{ s.t. } P(x)\strut$    

のような表現が使われる. $ \exists x \in A \exists y \in A[P(x,y)]\strut$のように $ \exists \strut$が続くときは $ \exists x, y\in A [P(x)]\strut$と省略する.

また(**)の右辺のように, 条件が“すべての$ x$に対して,$ \cdots$”の形のときは,記号 $ \forall \strut$ を用いて, $ \forall x [\cdots ]\strut$のように表す.

記号$ \forall$はAll(すべて)の頭文字のAをさかさまにしたものである.この記号を最初に用いたのはGerhard Gentzen (1909-1945)である. [7]

また, $ \forall x [ x \in A  \rightarrow P(x) ]\strut$の形の条件は,

$ \forall x \in A [P(x)]\strut$   $ \forall x \in A ;P(x)\strut$
$ \forall x \in A :P(x)\strut$   $ P(x) (\forall x \in A)\strut$
$ P(x) \textrm{ for all } x \in A\strut$    

のような表現が使われる.$ \exists $の場合と異なり, $ \forall x \in A \textrm{ s.t. } P(x)\strut$という使い方はしない. $ \forall x \in A \forall y \in A[P(x,y)]\strut$のように$ \forall$が続くときは $ \forall x, y\in A [P(x)]\strut$と省略する.このような表現法をもとにして,

$ m \in \{3n\bigm \vert n\in \mathbb{N}\}\strut$であるための必要十分条件は $ \exists n\in \mathbb{N}[ m=3n]\strut$である.
とか
$ a,b,c\in \mathbb{R}\strut$$ a > 0$とするとき, $ \forall x \in \mathbb{R}[ax^2+bx+c > 0]\strut$であるための必要十分条件は $ b^2-4ac < 0\strut$である.
のような使い方をする. $ \exists $$ \forall$量化記号(quantifier)8とよぶ.

表: 量化記号
日本語 論理記号
すべての,任意の $ \forall$
存在する $ \exists $

条件による集合の表現方法は変数が増えても同様である. 例えば,集合$ A$の元$ x$と集合$ B$の元$ y$についての式 $ p(x,y)\strut$が与えられたとき, $ A$の元$ x$$ B$の元$ y$によって $ p(x,y)\strut$と表されるものの全体を $ \{p(x,y)\bigm \vert x\in A, y\in B\}\strut$で表す. $ \{p(x,y)\bigm \vert x\in A, y\in A\}\strut$ $ \{p(x,y)\bigm \vert x,y\in A\}\strut$と書くことにする.

1.13  

実数上の$ 2$項たてベクトル全体の集合 $ \mathbb{R}^2\strut$

$\displaystyle \left\{ \left( \!\!\begin{array}{c} a  b \end{array} \!\!\right...
...[-20pt]{0pt}{8pt} \rule[-16pt]{0.5pt}{39pt} a,b \in \mathbb{R} \right\}\strut$

で表される.また,実数上の$ 2$次行列全体の集合 $ M_2(\mathbb{R})\strut$

$\displaystyle \left\{ \left(\begin{array}{cc}
a&b\\
c&d
\end{array}\right)\...
...le[-20pt]{0pt}{8pt} \rule[-16pt]{0.5pt}{39pt} a,b,c,d \in \mathbb{R} \right\}$

で表される.

1.14  

ベクトル $ \left( \!\!\begin{array}{c} 1  2 \end{array} \!\!\right)\rule[-20pt]{0pt}{8pt}$ $ \left( \!\!\begin{array}{c} 2  1 \end{array} \!\!\right)\rule[-20pt]{0pt}{8pt}$の一次結合全体の集合は

$\displaystyle \left\{ x\left( \!\!\begin{array}{c} 1  2 \end{array} \!\!\righ...
...)\rule[-20pt]{0pt}{8pt} \rule[-16pt]{0.5pt}{39pt} x,y \in \mathbb{R} \right\}$

のように表される.

問題 1.15   次の集合を条件による方法で表せ.
  1. 実数係数の$ x$についての高々$ 2$次の多項式全体の集合
  2. 実数上の$ 2$次の対角行列全体の集合

$ C:=\{p(x,y)\bigm \vert x\in A, y\in B\}\strut$のとき,

$\displaystyle a\in C  \Leftrightarrow \exists x\in A \exists y\in B[ a=p(x,y) ]\strut$

が成り立つ.従って,


与えられた集合 $ C:=\{p(x,y)\bigm \vert x\in A, y\in B\}\strut$に対し, $ a\in C$を示すには, $ a=p(x,y)\strut$となる元$ x\in A$$ y\in B$が存在することを示せば良い.


また $  \Leftrightarrow $の左右の式を否定して書き換えると

$\displaystyle a \notin\strut C  \Leftrightarrow \forall x \in A \forall y \in B [ a \ne p(x,y)]$

となるから, 与えられた集合 $ C:=\{p(x,y)\bigm \vert x\in A, y\in B\}\strut$に対し, $ a\notin\strut C$を示すには,任意の$ x\in A$$ y\in B$に対し $ a\ne p(x,y)\strut$であることを示せば良い.

例題 1.16   次が正しいかどうか調べよ.
  1. $ 11\in \{2m+3n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z}\}\strut$
  2. $ 11\in \{2m+6n \bigm \vert m,n\in \mathbb{Z}\}\strut$
  3. $ 16\in \{5m+4n \bigm \vert m,n\in \mathbb{N}\}\strut$
  4. $ 7 \in \{m^2 + n^2 \bigm \vert n,m \in \mathbb{N}\}\strut$

1: $ m=1,n=3$とすると,$ 2m+3n=11$であるから, $ 11\in \{2m+3n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z}\}\strut$である.
2: $ 2m+6n=2(m+3n)\strut$より $ 2m+6n$$ 2$で割り切れるが$ 11$$ 2$では割り切れないから,任意の $ m,n \in \mathbb{Z}\strut$ に対し, $ 2m+6n\ne 11\strut$である.従って, $ 11\notin\strut \{2m+6n \bigm \vert m,n\in \mathbb{Z}\}\strut$である.
3:$ 5m+4n$が偶数になるのは$ m$が偶数のときである.$ m\geqq 4$ならば $ 5m+4n\geqq 20$である.$ m=2$のとき,$ 10+4n=16$となる自然数$ n$は 存在しない.従って, $ 16\notin\strut \{5m+4n \bigm \vert m,n\in \mathbb{N}\}\strut$である.
4: $ m\geqq 3$ならば $ m^2\geqq 9\strut$であるから $ m^2+n^2\geqq 9 >7\strut$である.$ m=2$ のときは, $ 4+n^2-7=n^2-3\ne 0 (\forall n \in \mathbb{N})\strut$である.$ m=1$ のときも同様に, $ 1+n^2-7=n^2-6\ne 0 (\forall n \in \mathbb{N})\strut$である.よって, $ 7\ne m^2+n^2 (\forall m,n \in \mathbb{N})\strut$ であるから, $ 7 \notin\strut \{m^2 + n^2 \bigm \vert n,m \in \mathbb{N}\}\strut$である. $ \Box$

問題 1.17   次が正しいかどうか調べよ.

  1. $ 10 \in \{3m+4n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z}\}\strut$
  2. $ 12 \in \{8m+5n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z}\}\strut$
  3. $ 7 \in \{3m+5n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z}\}\strut$
  4. $ 5\in \{3m+4n \bigm \vert m,n\in \mathbb{N}\}\strut$
  5. $ 10 \in \{2m^2 + n^2 \bigm \vert m,n \in \mathbb{N}\}\strut$
  6. $ 6 \in \{2m^2 + n^2 \bigm \vert m,n \in \mathbb{N}\}\strut$
  7. $ 7 \in \{m^2 - n^2 \bigm \vert m,n \in \mathbb{N}\}\strut$
  8. $ 10 \in \{m^2 - n^2 \bigm \vert m,n \in \mathbb{N}\}\strut$
  9. $ \left( \!\!\begin{array}{c} 1  -1 \end{array} \!\!\right)\rule[-20pt]{0pt}{8...
...)\rule[-20pt]{0pt}{8pt} \rule[-16pt]{0.5pt}{39pt} x,y \in \mathbb{R} \right\}$
  10. $ \left( \begin{array}{c} 1  0  0 \end{array} \right)\in \left\{ x\left( \be...
...rule[-20pt]{0pt}{8pt} \rule[-16pt]{0.5pt}{39pt} x,y,z \in \mathbb{R} \right\}$

例題 1.18   $ m \in \mathbb{Z}\strut$とする. $ 6m+1 \in \{ 3n+1\bigm \vert n \in \mathbb{Z} \}$であることを示せ.

$ 6m+1=3(2m)+1\strut$であるから,$ n=2m$とすると$ 6m+1=3n+1$が成り立つ.よって, $ 6m+1 \in \{ 3n+1\bigm \vert n \in \mathbb{Z} \}$である. $ \Box$

問題 1.19   $ 9p^2+6p+2 \in \{m^2+1\bigm \vert m \in \mathbb{Z}\}\strut (\forall p \in \mathbb{Z})$を示せ.

問題 1.20   $ m^2+1 \in \{4p^2+4p+2\bigm \vert p \in \mathbb{Z}\}\strut$はどのような $ m \in \mathbb{N}\strut$に対して成り立つか調べよ.

1.2.4 条件による方法(その3)

その1とその2の方法を組み合わせて集合を表現することもある. 例えば,集合$ A$が条件 $ A(x)\strut$により 1の方法を用いて $ A:=\{x\bigm \vert A(x)\}\strut$と表され,さらに集合$ B$がその$ A$と式 $ p(x)\strut$を用いて2の 方法で $ B:=\{p(x)\bigm \vert x\in A\}\strut$と表されている場合,$ B$を条件 $ A(x)\strut$と式 $ p(x)\strut$を用いて直接

$\displaystyle B:=\{p(x)\bigm \vert A(x)\}\strut$

と表すのである.条件による方法(その1)は式 $ p(x)\strut$が特に“$ x$”の形の条件の場合であり, 条件による方法(その2)は条件 $ A(x)\strut$が特に“$ x\in A$”の形の条件の場合である. $ \{p(x,y)\bigm \vert A(x,y)\}\strut$のように変数が増えても同様に考える.

例題 1.21   次の集合を元を並べる方法で表せ.
  1. $ \{3n\bigm \vert n\in \mathbb{N}, n\leqq 5\}\strut$
  2. $ \{mn \bigm \vert m,n \in \mathbb{Z}, \vert m\vert + \vert n\vert\leqq 1\}\strut$

1: 条件 $ n\in \mathbb{N}, n\leqq 5$をみたす$ n$ $ n=1,2,3,4,5$ であるから,元をすべて並べてこの集合を表すと, $ \{3,6,9,12,15\}\strut$になる.
2: $ \vert n\vert + \vert m\vert\leqq 1$をみたす整数$ m,n$の組は, $ (m,n)=(\pm 1, 0), (0, \pm 1)
, (0,0)\strut$であるから,いずれの場合も$ mn=0$である.よって, $ \{mn \bigm \vert m,n \in \mathbb{Z}, \vert m\vert + \vert n\vert\leqq 1\}\strut=\{0\}\strut$である. $ \Box$

問題 1.22   次の集合を元を並べる方法で表せ.
  1. $ \left\{\dfrac{1}{n} \bigm \vert n\in \mathbb{Z}, 0 < n^2\leqq 4\right\}\strut$
  2. $ \{n^2 + m^2 \bigm \vert n,m \in \mathbb{Z}, \vert n\vert\leqq 2 , \vert m\vert\leqq 2 , \vert n + m\vert\leqq 1\}\strut$

問題 1.23   次の集合を元のみたす条件による方法を用いて表せ.(表し方は一通りではない.複数考えてみよう.)
  1. $ \{1,4,9,16,25\}\strut$
  2. $ \{1,4,7,10,13\}\strut$

$ B:=\{p(x)\bigm \vert A(x)\}\strut$のとき,

$\displaystyle a\in B  \Leftrightarrow a=p(x)  \wedge A(x) \textrm{ for some }x\qquad\textrm{(\dag )}\strut$

が成り立つ.従って,

与えられた集合 $ B:=\{p(x)\bigm \vert A(x)\}\strut$に対し, $ a\in B$を示すには, $ a=p(x)\strut$かつ $ A(x)\strut$をみたす元$ x$が存在することを示せば良い.

$ \textrm{(\dag )}\strut$ $  \Leftrightarrow $の左右の式を否定して書き換えると

$\displaystyle a \notin\strut B  \Leftrightarrow \forall x [a=p(x)  \rightarrow \neg A(x)]\strut$

あるいは

$\displaystyle a \notin\strut B  \Leftrightarrow \forall x [A(x)  \rightarrow a\ne p(x)]\strut$

となるから,

与えられた集合 $ B:=\{p(x)\bigm \vert A(x)\}\strut$に対し, $ a \notin\strut B$を示すには,

$ a=p(x)\strut$をみたす任意の$ x$に対し $ A(x)\strut$がなりたたないこと,
あるいは
$ A(x)\strut$をみたす任意の$ x$に対し $ a\ne p(x)\strut$となること
を示せば良い.

ただし, $ a=p(x)\strut$をみたす$ x$が少ない場合 は前者の形で示す方が容易である.

変数が増えても同様に考える. $ B:=\{p(x,y)\bigm \vert A(x,y)\}\strut$のとき,

$\displaystyle a\in B  \Leftrightarrow \exists x \exists y s.t. a=p(x,y)  \wedge A(x,y) \strut$

であり, $  \Leftrightarrow $の左右の式を否定すると,

$\displaystyle a \notin\strut B  \Leftrightarrow \forall x \forall y [ a=p(x,y)  \rightarrow \neg A(x,y)]\strut$

あるいは

$\displaystyle a \notin\strut B  \Leftrightarrow \forall x \forall y [ A(x,y) \rightarrow a\ne p(x,y) ]\strut$

である.

例題 1.24   $ 10\in \{3m+4n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z},m,n$ はともに偶数$ \}\strut$を示せ.

$ m=6, n=-2$とすると,$ 10=3m+4n$$ m,n$はともに偶整数である から, $ 10\in \{3m+4n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z},m,n$はともに偶数$ \}\strut$である. $ \Box$

例題 1.25   $ 12 \notin\strut \{8m+5n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z},m,n > 0\}\strut$を示せ.

$ m,n\in \mathbb{Z},m,n > 0\strut$とすると,$ m,n\geq 1$より $ 8m+5n\geq 8+5=13$ であるから, $ 12\ne 8m+5n\strut$である. よって, $ 12 \notin\strut \{8m+5n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z},m,n > 0\}\strut$である. $ \Box$

問題 1.26   次が正しいかどうか調べよ.
  1. $ 9 \in \{2m+5n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z},m,n > 0\}\strut$
  2. $ 12 \in \{7m+4n\bigm \vert m,n\in \mathbb{Z},m,n > 0\}\strut$
  3. $ 10 \in \{n^2 + m^2 \bigm \vert n,m \in \mathbb{Z},\vert n + m\vert\leqq 2\}\strut$

1.2.5 記号の書き換え

$ A:=\{x\bigm \vert A(x)\}\strut$は条件 $ A(x)\strut$をみたす$ x$の全体を表す集合であるから 記号$ x$を別の記号$ y$で置き換えて 得られる表現 $ \{y\bigm \vert A(y)\}\strut$により定まる集合は$ A$と同一の集合である.

1.27  

$ \{3n\bigm \vert n\in \mathbb{N}\}\strut$ $ \{3m\bigm \vert m\in \mathbb{N}\}\strut$はともに$ 3$の倍数の 集合を表す.

条件や集合をいくつも同時に扱うとき,条件を表す変数として同じ記号を用いると 混乱する恐れがあるときは,この記号の書き換えを行って表現を変える事が多い9

TAKAHASHI Makoto : http://herb.h.kobe-u.ac.jp/