二つの集合に対し,かの少なくとも一方に属する元をすべて集めて作った集合を,
との和集合,結び(union)とよび,で表す.すなわち,
である.
和集合を表すのに記号
を最初に用いたのはGiuseppe Peano (1858-1932)である.
[7]
命題 1.53
,
のとき,
である.
証明:
より,
である.
例 1.54
証明:
1:
2:
3:
4:
5:
とする.場合に分けて証明する.
が成り立つとき,
よりである.
が成り立つとき,
よりである.
いずれの場合もが成り立つ.
定理1.55
の5.の証明にあるように,
の形の命題を証明するには
場合わけを用いることが多い.具体的には,との場合にわけて.
と
を示すのである.
問題 1.56
を示せ.
二つの集合に対し,かのいずれにも属する元の全体からなる集合を,
との共通部分,交わり(intersection)とよび,
で表す.すなわち,
である.
共通部分を表すのに記号
を最初に用いたのはGiuseppe Peano (1858-1932) である.
[7]
命題 1.57
,
のとき,
である.
証明:
より,
である.
例 1.58
証明:
証明は定理
1.55の証明と同様にできる.
のとき,とは互いに素(mutually disjoint)であるとよばれる.
問題 1.63
を示せ.
二つの集合に対し,に属する元でに属さないものの全体からなる集合を,
からを引いた差集合(difference)とよび,(あるいは
)で表す.
すなわち,
である.
定義より
が常に成り立つ.
問題 1.64
を示せ.
命題 1.65
,
のとき,
である.
証明:
より明らか.
証明:
とする.
である.このとき,
より
であり,
より
である.
従って,
,すなわち
である.
問題 1.68
を示せ.
問題 1.69
とする.
を示せ.
問題 1.70
を示せ.
問題 1.73
は必ずしも成り立たない.
反例を挙げよ.
をとの対称差とよび,
で表す.
証明:
1,3,4は定義より明らか.5も問題
1.67より明らか.
2を示す.
を(左辺を定義にしたがってがんばって計算して)示せば,右辺の式で
と
を入れ換えても同じ集合を
表わすから,
である.1より
でさらに
であるから
である.
問題 1.75
を示せ.
問題 1.77
ならば,
であることを示せ.
(ヒント:ごりごり計算してもできるが,定理 1.74の2
と5
を使うとエレガントにできる.)
一般に与えられた集合の元やの部分集合のみを考察の対象にするとき,
を全体集合,全集合(universal set)とよぶ.全体集合としてを考えているとき,
をの(に関する)補集合(complement)とよび,で表す.ド・モルガンの法則より次の定理が成り立つ.
証明:
であるから,定理
1.71より定理が導かれる.
問題 1.79
全体集合をとするとき,集合に対し次の関係が成り立つことを示せ.
二つの集合に対し,の元との元を一つの組にして
で表すことにする13.
このような組のことを順序対(ordered pair)とよぶ.
において,を第1成分,を第2成分とよぶ.順序対の相等は
により定義14する.平面上の点の座標は,順序対の例である.の元との元から作られる
順序対の全体をで表し,との直積(direct product)とよぶ.
とは異なるものであることに注意せよ.また,任意の集合に対して,
とする.
例 1.80
とすると,
である.
解:
1.32より、任意の
に対し、
を示せば良い。
問題 1.83
ならば
は正しいか.正しければ証明し,間違っているならば
反例をあげよ.
順序対の概念を,
や
のような3つ組や4つ組などに拡張することで,
集合の直積
,集合の直積
などを定義することができる.また,
を
で表すことにする.
集合の部分集合をすべて集めてできる集合を,のべき集合(power set)とよび,
で表す.
である.
例 1.85
集合
のべき集合
は,
である.
証明:
としても一般性を失わわない
15.このとき,
の部分集合の取り方は
を含むか含まないか,
を含むか含まないか,
を含むか含まないか,
,
を含むか含まないか
で決まるから,その総数は
である.
TAKAHASHI Makoto : http://herb.h.kobe-u.ac.jp/